東京地方裁判所 平成10年(ワ)12842号 判決 1998年11月17日
主文
一 被告は、原告に対し、金三三〇万円及びこれに対する平成一〇年六月一九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告の負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文と同じ。
第二 事案の概要
一 (争いのない事実)
1 原告は、平成五年四月九日、訴外株式会社カリオカから、被告経営のゴルフクラブであるホノルルカントリークラブの会員契約についての会員資格の譲渡を受けた。
2 右会員契約によれば、既に預託済みの三三〇万円は、預託証書発行日である昭和五五年三月一二日から一〇年間据え置き、その後会員からの請求により、返還することになっている。
3 原告は、被告に対し、平成一〇年四月二三日到達の書面で、本件預託金の返還を請求した。
4 本件ゴルフクラブの会則九条には、天災地変その他クラブの運営上、やむを得ない事由があるときは、被告取締役会決議により据置期間を延長することができる旨の規定がある。
5 被告は、平成九年九月三〇日、右事由があるとして、原告を含む一部会員について据置期間を一〇年間延長する旨の取締役会決議をした。
6 原告は、本件預託金の返還を請求するものである。被告はこれに対し、右延長決議を理由に原告の請求を争っている。
二 (争点)
争点は第一に、本件において右やむを得ない事由があるかどうか(本件決議の有効性)、第二に、本件決議がそもそも原告を拘束するかの二点である。
第三 争点第一に対する判断
右やむを得ない事由とは、天変地変に類似する事由に限られ、経済変動によるゴルフ業界の不況はこれに当たらないというべきである。そうすると、被告の主張するやむを得ない事由の内容は、要するにいわゆるバブル崩壊を理由とする経済変動を指すにすぎないから、やむを得ない事由には該当せず、本件取締役会決議によって、据置期間の延長の効力は生じないというべきである。よって、被告の主張には理由がない。
(裁判官 黒津英明)